瀉血(しゃけつ)
- 2020.03.03
瀉血とは、人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法の一つで、古くは中世ヨーロッパ、さらに近代のヨーロッパやアメリカ合衆国の医師たちに熱心に信じられ、盛んに行われたましたが、現代では医学的根拠は無かったと考えられている治療法のことです。
体内にたまった不要物や有害物を血液と共に外部に排出させることで健康を回復する、という考えに基づいたものですが、風邪や下痢、果ては単なる咳に対してもドバドバ血を抜いたため、より体調を崩したり、亡くなる方も多くいました。
初期のアメリカ合衆国では医師といっても、医療行為としては瀉血ばかりを行っていて、他にはほとんど何もしないというような医師も多かったようです。
有名なところでは、古くはモーツアルトやアメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンも瀉血によって亡くなったと言われています。
そもそもは古代ローマにはじまり、約2000年もの間、無根拠に瀉血は続きました。
19世紀、病理学的に意味がないどころか、患者にとって不利益が多いことが判明しても一般的な治療法として中々なくなることはありませんでした。
どれだけ一般的だったのかという逸話の一つに、理髪店の赤白青のボールサインが静脈・動脈・包帯を現し、「うちは瀉血をやってます!」というサインだったという説があります。(諸説ありますし、おそらくデマですが…)
私(40歳)が子どもの頃、高度成長期の日本でもヒルによる瀉血を叔父が行っていましたし、広く言えば、現在の「血液クレンジング」と呼ばれる治療法?も瀉血の一つと言えると思いますが、当然意味はありませんし、今後どういった副作用が起こるか未知数です。
つい数年前まではカッピング療法(吸い玉療法)によって患部をうっ血させることが治療に役立つと信じられていました。
多くのアメリカ代表のオリンピック選手が行っていたことでも有名ですが、医学的または科学的根拠はありません。
このように、権威のある人が推奨し、「なんとなく効きそう」と思える治療法であれば、死に至るような危険で無根拠なものであっても人は手を出してしまいます。
現在も、です。
有名人が推奨するダイエット法と同じ理屈ですね。
例外的に、多血症やC型肝炎、ヘモクロマトーシスといった病気の治療過程において、医学的根拠の上で瀉血が行われることがあるそうですので、信頼できる医師の指示に従って下さい。