定言命法とは
- 2022.08.13
カント繋がりで本日は定言命法を。
次のふたつの命令を比べてみてください。
一つ目は「もし暖かくしていたいのならコートを着なさい」。
二つ目は 「人を殺すな」 。
ひとつめの命令には、それに従うべき理由が示されていて、もし暖かくしていたいのなら、 そうすべきだと命じています。
もし暖かくしていたくないのなら、この命令に従う理由はありません。
それとは違って、 「人を殺すな」 という命令は、誰かを殺したいと思っているかどうかに関係なく、全員に適用されると、ほとんどの人は信じていますよね。
ドイツの哲学者イマヌエル・カントは、 人間と、 「人を殺すな」という命令などの道徳法則との関係を説明するのに、「定言命法」 という言葉を使いました。
これは、何をすることが許されるのかを示す法則で、 私たちの欲求に関係なく私たち全員に適用される、無条件の道徳法則が存在すると考えていました。
つまり、 道徳法則は、「○○をせよ(または、するな)」と、私たちの欲求に関係なく命令形で表現されるということです。
カントは、道徳法則を特定するための方法をいくつか説明していますが、最も有名なのは普遍的立法の原理と呼ばれるものです。
カントは、「あなたの意志の格率が、常に同時に、普遍的立法の原理として妥当するように行為せよ」と説いています。
あなたの意志の格率とは、あなたの行為の理由または基本原則のことです。
例えば、あなたが友人からお金を借りて、返す気がないのに返すと約束した場合、 あなたの格率は 「金を手にするためには偽りの約束をせよ」 となります。
普遍的立法の原理とは、 「あなたがすべての人に、この格率に従って行為してほしいと望むことができないのなら、その行為は道徳法則に反していることになる」 という原理です。
もし誰もが金を手にするために偽りの約束をすれば、 約束を信じて金を貸す者はいなくなるでしょう。
つまり、あなたが偽りの約束をする場合、 あなたは、同様の約束をする人の全員が嘘をついているわけではないと望んでいるはずです。
そうでなければ、嘘をついたところで何の得にもなりません。
つまり、偽りの約束は道徳法則に違反している、という訳です。