斬り捨て御免のルール
- 2022.08.14
無礼を働いた町人に対して、武士が「無礼者!そこになおれ!」と言って、バッサリと手打ちにしてしまい、斬った武士が「斬り捨て御免!」と言う時代劇にありそうな場面です。
いわゆる「無礼討ち」というやつですね。
この「無礼討ち」、本当にあったそうで、8代将軍・徳川吉宗の時代に作られた武家の法律、『公事方御定書』のなかにも、ちゃんと明記されていたとのこと。
江戸幕府が武士の体面を保つために作った悪法です。
ところが、この「無礼討ち」、実はそれをやる武士のほうも、結構大変だったのです。
まず、無礼討ちをした武士は、すぐにその事実をお上に届け出なくてはなりませんでした。
しかも、理由はどうあれ、最低20日間は自宅謹慎。
そして、「本当に無礼があったこと」を証明する証人まで必要でした。
証人が見つからずに、正当性も認められない場合、最悪だと、罪人として打ち首になることもあったのです。
無礼討ちをした武士の中には、証人を用意できず、「打ち首になるくらいなら」と、自ら切腹してしまう者もいたそうです。
そして、無礼討ちをしようとする相手には「刃向かう権利」が認められていました。
そこで武士を返り討ちにした人は、たとえ町人でもお咎めなしだったのです。
古典落語の『たがや」は、無礼討ちにしようとした武士を、逆に町人がやっつけてしまう話ですが、もし話に続きがあったとしても、彼はお咎めなしだった、ということです。