ざっくりヒンドゥー教のカルマの話
- 2022.08.21
カルマ (業)とは、 道徳的な因果の連鎖のことで、ヒンドゥー教の中核をなす考え方のひとつです。
ヒンドゥー教は、紀元前3000年にまでさかのぼることのできる古い宗教で、 特定の開祖は知られていません。
ヒンドゥー教徒は、 生き物は死と再生を繰り返すという輪廻を信じています。
なので、生きている間に人が行う善行や悪行が、 来世に影響を与え、と考えます。
一言で言えば 「因果応報」ということです。
善行を積めば来世で善い結果が得られ、 悪行を重ねれば来世は悪い結果になります。
ヒンドゥー教徒は、 善行を積む際の指針として、昔から伝わるヒンドゥー教の聖典に示されているダルマ (正義) に従います。
カルマには三つの種類があります。
ひとつ目はプラーラブダ・カルマ。
これは、私たちがコントロールできないカルマです。
具体的には、 自分の親、 生まれるカースト (身分) 出生地など、人生の基本的な前提条件を指します。
こうした条件は変えることができず、すべて前世の行為によって決まっていると考えます。
二つ目はサンチタ・カルマです。
これは、私たちの前世での全行為が現世での個人的な興味・性向・人格を決めていることを指します。
サンチタ・カルマがあるので、例えば、ふたりの子どもが同じ環境に生まれても、性格がまったく違う子に育つことがあると考えます。
サンチタ・カルマは、 現世での努力や反省で変えることができるものです。
持って生まれた悪い習性は改善できるし、逆に善い習性が崩れていくこともあります。
三つ目であるアーガミ・カルマは、 現世で私たちが実践する行為が、現世で私たちに影響を及ぼすことを指します。
例えば、隣人に親切に接するか不親切に振る舞うかで、 将来自分がどう接せられるかが決まるかもしれません。
三つのカルマのうち、私たちが最もよくコントロールできるのが、このアーガミ・カルマです。
カルマの思想は仏教にもありますが、ヒンドゥー教のカルマは、神の介入を認めるという点で仏教と大きく異なっています。
ヒンドゥー教では、人が死んだら、 ブラフマン神がその人物の行った善行と悪行の量を比較し、 来世で何に生まれ変わるかを決めると信じられています。
また、はじめ少々悪行に手を染めていても、 その後に善行をたくさん積めば、 最初の悪行の影響をブラフマンが軽くしてくれるとも考えられています。
これに対して仏教徒は、 カルマを絶対的な自然法則のように捉えています。