死ぬほどざっくり「フェルマーの最終定理」を解説
- 2022.09.21
1637年、数学者ピエール・ド・フェルマーは、読んでいた 『算術』 という書物の余白に不思議なメモを書き込みました。
nが2より大きい正の整数であるとき、xn+yn=zn を満たす正の整数 x,y,z は存在しないと書いたのです。
彼は、この主張に対する 「じつにすばらしい証明」を見つけましたが、その証明を書くにはこの余白では狭すぎると記しています。
現在分かっている限り、フェルマーは証明をどこにも書き残してはいません。
以後、数学者たちは何百年にもわたって、彼の言う証明を再現しようと何度も挑戦し続けてきました。
また、そもそもフェルマーは本当に証明していたのかと疑い、この定理を自ら証明しようとした者もいました。
その中には、証明は不可能だと思って挑戦をやめてしまう者もおり、やがて、この問題は証明されずに最後まで残った定理という意味で、 「フェルマーの最終定理」と呼ばれるようになりました。
フェルマーが最後に書いた定理という意味ではありません。
x2+y2=z2を満たす正の整数x、y、z が存在することは、よく知られています。
そうした数字の組み合わせをピタゴラス数といい、無数に存在します。
例えば、3、4、5。
3²-4²=5²
9+16=25
しかし、x3+y3=z3 (n=3) や x4+y4=z4 (n=4) の場合は、これを満たす正の整数は存在しません。
このように、 n が具体的な数値を取る場合については成立しないことがいくつも証明されていますが、nに2より大きいどんな整数を入れても成立しないということは、357年間、誰にも証明できませんでした。
1994年にそれを証明したのが、 プリンストン大学のアンドリュー・ワイルズでした。
彼は、楕円曲線やモジュラー形式など、 同じ数学でも関係がなさそうに見える分野を結びつけ、 150ページに及ぶ論文を書き、 それまで何世代にもわたって数学者の頭を悩ませ続けてきた問題を解いたのです。
証明でワイルズは、フェルマーの時代には知られていなかった20世紀の数学技法を数多く駆使しているため、ワイルズは、フェルマーは本当は定理を証明していなかったと考えています。