ざっくり「マンハッタン計画」を解説

2022.09.25

ざっくり「マンハッタン計画」を解説

1939年8月、著名な科学者アルバート・アインシュタインはアメリカ合衆国大統領フランクリン・D・ルーズヴェルトに短い手紙を送り、ナチスドイツがウランから原子爆弾を開発するのではないかと非常に深く憂慮していると伝えました。
そのような爆弾がナチスの手に入ったらどうなるか、想像もつかないと。
「もしこの爆弾がたった1発、船で運搬されて港で爆発しただけで、港全体を、その周辺地域もろとも破壊してしまうでしょう」。

第二次世界大戦が迫っていた同年夏、ヨーロッパから伝えられる情勢が日増しに不穏さを増していく中、アインシュタインは、ますます不安を募らせていました。

アインシュタインは、手紙をルーズヴェルトへの警告として出しましたが、それは予期せぬ結果を招きました。

ナチスドイツがそのような恐ろしい兵器を開発できるのなら、アメリカで先にもっと優れた兵器を作ってしまおうと、ルーズヴェルトは決断したのです。

アメリカは、1941年に参戦する以前に、ウランの軍事利用を研究するプログラムを開始しました。
真珠湾攻撃後、このプログラムはマンハッタン計画といわれるものとなりました。

ニューメキシコ州の人里離れた施設で数年に及んだ研究の末、連合国の科学者チームは1945年、ついに原子爆弾を完成させました。

マンハッタン計画には、大戦中にもかかわらず最盛期には世界トップクラスの科学者たちが数百人も参加していました。

優秀な科学的頭脳がこれほど集結したことは、これ以前もこれ以降もありませんでした。

参加した科学者の多くは、アインシュタインと同じく、ナチス支配下のヨーロッパから逃れてきた者たちでした。

アメリカ政府はこの爆弾に、現在の価値に直して合計約200億ドル相当の資金を投じました。

原子爆弾は、1945年に日本の広島と長崎に投下され、日本の戦争を支える主要な工業都市だった両市は壊滅し、12万もの民間人が死亡しました。

原爆投下は日本軍の降伏が目的で、事実そうなりました。

長崎に原爆が落ちて数日後、日本は降伏を決断しました。

1945年の原爆投下については、今も賛否が分かれています。
当時アメリカの将軍たちのあいだでは、ドワイト・D・アイゼンハワーも含めた多くの者が、原爆投下は不要であり、投下すればアメリカの名声を汚すことになるだろうと思っていました。

対して、原爆投下で戦争終結が早まるだろうと考える者たちも多くいました。
この考えが現在もアメリカでは支配的です。

一方、原爆を製造可能にする理論の発見者であるアインシュタインは､驚愕していました。

彼は戦後、ルーズヴェルトに原子の恐ろしい力について警告したことを後悔していると語りました。