『罪と罰』を読んだ気になろう
- 2023.03.14
フョードル・ドストエフスキーの『罪と罰』は、 多くの点で発表は1866年ですが、真の意味で最初の20世紀小説と言えるでしょう。
この殺人罪悪感・疎外・贖罪の物語は、20世紀に数多くのモダニズム文学や実存主義文学が登場する下地を作り、今も文学と映画の両方に影響を与え続けています。
小説の舞台はロシアのサンクトペテルブルク。
主人公ラスコーリニコフは、若い大学生で、自分には人生で成功する素質があると思っているのですが、貧しく機会に恵まれていないことに不満を抱いていました。
やがて彼は、自分には非凡な才能があるのだから、 強欲な高利貸の老婆を殺し、その老婆が貯め込んでいた財産を立派な目的を成し遂げるために使うことは正当化されると考えてしまいました。
しかし、 実際に殺人を犯したものの、うろたえてしまって金を奪うのに手間取り、 金を手に入れることもできないまま、偶然その場に居合わせた老婆の妹まで殺してしまいます。
この失敗にラスコーリニコフは苦しんで不安に沈み、自分が殺人を犯した真の動機を問い直します。
しかも、その間ずっと、 殺人の証拠を握っているのかいないのか分からぬ予審判事につきまとわれます。
『罪と罰』は、ラスコーリニコフの動機と精神状態を詳細に探っているという点で、最初の心理小説のひとつとして、且つ、今なお最高の心理小説のひとつとして 知られています。
同時に、これは傑作サスペンス小説でもあります。
ラスコーリニコフが捕まるのかどうか、 それとも彼が進んで自首するのかどうか、考えながら読み進めるうちに緊張感が高まってきます。
実際、『罪と罰』は、まるで大衆向けの犯罪小説か何かのように、1年かけて雑誌に連載されました。
この小説により、 ドストエフスキ(1821~1881) の懐には、喉から手が出るほど欲しかった財産が転がり込み、 賭博による借金を返済することができました。
また、作家レフ・トルストイ (1828~1910) など当時の人々は、この小説は傑作だと絶賛しています。
以来、 ジークムント・フロイト (1856~1939) フリードリヒ・ニーチェ (1844~1900) ジャン=ポール・サルトル (1905~1980) アルベール・カミュ (1913~1960)など、 多くの人が、 この本から直接影響を受けたと語っています。