聴診器の発明は「子どもの遊び」のおかげ
- 2023.04.22
みごとなほど単純なのに、これほど病気の診断に役立っているものがあるだろうか、と思われるのが聴診器ですが、それほど大昔から存在していたわけではありません。
1819年、フランス人の病理学者ラエネクは、子どもの遊びから偶然、聴診器のアイディアを思いつきました。
彼がルーブル宮殿の中庭を歩いていると、子どもたちが長い棒の両端に耳をつけ、音を聞いて遊んでいたのです。
彼は、こうして音を聞く原理を心臓病に応用できないかと考えました。
翌日、自分の病院の診察室で紙を巻いて筒をつくり、さっそく患者の胸に当てると、異常な雑音が聞こえました。
数多くの実験の後、彼は長さ30センチ、直径3センチの木製の円筒を、聴診器として完成させたのです。
この聴診器、簡単で確実な診断ができるということで、すぐに広がりました。
しかし皮肉にも、ラエネクは聴診器を完成させた直後、自分がかなり重い肺疾患にかかっていることを発見します。
そのあと彼は、この疾患がもとで、1826年に45歳の若さで世を去ります。
しかしそれまでに、肺疾患のあらゆる原因を科学的に整理した医学書を完成させました。
「この本によって、医学は科学的な方向へと向かっていった」と言われるほどの名著だそうです。