【創作怪談】稲武の森
- 2023.07.20
ある晩、古びた民家の隅に佇む謎めいた男がいました。
彼の名は鈴木健太郎(すずき けんたろう)といいます。
彼は愛知県の奥深くにある不気味な場所、稲武(いなむ)の森に足を踏み入れました。
稲武の森は、かつて何らかの恐ろしい出来事があったとされ、今では人々から避けられるようになっていました。
しかし、鈴木はその噂を聞きつけ、禁断の探索に挑むことを決意しました。
鈴木は月明かりの下、稲武の森に入りました。
暗闇に包まれた森の中で、彼は不気味な気配を感じました。
木々が彼を見つめているようであり、森の中には生気を感じさせるものは何一つありませんでした。
彼は先を急いで進みましたが、次第に方向感覚を失ってしまいました。
森の中は迷路のように入り組んでおり、出口を見つけることができませんでした。
絶望が彼を襲いました。
途方に暮れる鈴木は、森の中で奇妙な現象に遭遇しました。
影が彼の周りに立ち上り、彼を取り囲んでいきます。
彼の名前が森の中に響き渡りました。「健太郎、健太郎...」と。
鈴木は恐怖に震えながらも必死に逃げ回りましたが、影たちは彼に執拗に迫りました。
そんな時間が数日も続き、彼に限界が訪れます。
彼は追い詰められ、護身用のナイフで自ら耳を削ぎ落とし、出口を探して歩きはじめました。
鈴木の消息はその後誰にも知られることはありませんでした。
稲武の森には未知なる力が宿っているのかもしれません。
それは人々を恐怖と絶望へと導き、闇に葬り去ってしまうのです。
鈴木健太郎のように、好奇心が命取りとなる運命に翻弄されることもあるのかもしれません。