「貝毒」の話
- 2023.05.09
日本人は古くから貝を重要な食料にしており、その痕跡は遺跡から発見される貝塚などでも明らかです。
出汁をとったり、身を食べたりするなど、多様な調理方法で食べられてきた貝類は、現在でも日本人の食卓には欠かせないもののひとつですが、少々危険な食材という側面があります。
アサリやホタテ、カキなど、現在でもおなじみの二枚貝には「貝毒」という危険な物質を含む可能性があるのです。
二枚貝が主食としているのは、海中に生息している植物プランクトン。
植物プランクトンの中には、サキシトキシン、ゴニオトキシン、オカダ酸、ディノフィシストキシンなどの毒を持っているものもいます。
それらを食べることで、二枚貝の体内に毒物が蓄積されていきます。
貝毒は、下痢性貝毒と麻痺性貝毒に分けられます。
下痢性貝毒の症状は、その名の通り下痢などの消化器系の障害が主です。
やっかいなのは麻痺性貝毒で、猛毒であるフグ毒にも匹敵するほどの高い毒性を持ちます。
神経系に障害を起こし、最悪の場合は死に至ります。
貝毒には熱に強いという特性もあり、加熱調理してもなくなることはないのが特徴です。
カキの毒については一般に知られているが、アサリやホタテなどにも高い毒性がある可能性についてはあまり認知されていません。
身近すぎる食材のため不安を感じるかもしれませんが、貝毒は常に危険があるというわけではありません。
貝毒になり得る植物プランクトンは、発生する時期や場所がある程度限定されているからです。
各地の漁協では定期的に海域ごとの検査を行って貝毒の発生を監視しています。
基準値を超えた貝は市場には出回らないようになっているため、一般の消費者であればあまり心配しなくてもよいそうです。