エレアのゼノンをご存知か
- 2023.10.27
古代のエレアで活躍した哲学者ゼノン(前495頃~前430頃)によれば、答えは、ニワトリは道を「渡れるはずがないから」だそうです。
理由はこうです。
道の反対側まで到達するには、まず道の中央まで歩かないとなりません。
そこまでは良しとしましょう。
ですが次は、残り半分の距離のうちの半分を、空中を飛ぶなり、飛び跳ねるなり、バタバタするなりして渡らねばなりません。
こうして道の四分の三を渡っても、残りの距離のうちの半分をなんとかせねばなりません。
行けども行けども、残りの距離の半分が残っている、という論理です。
ゆえに、到達するべき地点が限りなく前に続くので決して到着しないという結論を、ゼノンは導きました。
これは、「ゼノンのパラドックス」として知られる議論の中でも有名なものです。
彼の立てた論理のなぞなぞは、2000年にわたって哲学者を惑わせ、激高させました。
ゼノンはギリシャ語を話し、南イタリアのエレア派として知られる哲学の学派を教えました。
「ゼノンのパラドックス」は、彼の残した最も有名な遺産です。
この二分法のパラドックスと同じく、ゼノンが立てたその他のパラドックスも、運動に関連するものです。
そのうちのひとつ、「アキレスと亀のパラドックス」は、俊足の走者は先に出発したのろい亀に追いつけるか、という議論です。
走者は、まず亀が出発した地点に到達せねばなりません。
しかしそこへ到達するころには、亀はすでに第二地点へ到達しているため、走者はさらに走り続けねばなりません。
走者が亀の第二地点に到達するころには、亀はすでにそこにはいません。
走者がどれだけ速くても追いつくことができない、というパラドックスです。
もちろん、ゼノンも分かっていたように、走者は歩みののろい亀に追いつき追い越します。
そして、ニワトリも、ときには道を渡り切ります。
ゼノンがパラドックスで挑発的に尋ねているのは、「どうやって?」ということなのです。
ゼノンの生涯について分かっていることはほとんどありませんが、ゼノンの及ぼした影響は非常に大きいと言えるでしょう。
彼は、運動の根底にある力学を弟子らにじっくり考えさせました。
弟子たちはここから着想を得て、のちに数学や物理学における偉大な発見をすることになるのです。
ゼノンは、エレアの暴君を殺害しようとする謀略に関与し、無残な死を迎えました。
拷問を受けても共謀者の名を明かそうとせず、暴君の耳を噛み、はじめは半分まで、そして結局すべて噛み切ったのち、処刑されたそうです。