ヒトの冬眠の可能性
- 2022.09.12
2006年、関西地方の山で遭難した男性が24日ぶりに救出されたというニュースが日本中を駆け巡ったことがありました。
この男性は遭難してから飲まず食わずで、発見時の体温はわずか2度。呼吸も心拍も弱かったものの生存しており、その後、社会復帰を果たしたという後日談も伝わりました。
しかし、医療の常識ではこの状態での生還は考えられず、一部の専門家の間で男性は冬眠状態だったのではないかという見方も出たほどでした。
果たして人間は動物と同じように冬眠できるのか。
その答えは現段階ではノーと答える専門家が多いでしょう。
動物の冬眠のメカニズムそのものも、じつはさほど解明されていないこともあります。
ですが最近、そのヒントになりそうな興味深い説が浮上しました。
なんとヨーロッパの古代遺跡で、ネアンデルタール人が冬眠していたかもしれない痕跡が見つかったというのです。
場所はスペイン北部のアタプエルカにある「シマ・デ・ロス・ウエソス」という洞窟遺跡。
そこでは、およそ4万年以上前のネアンデルタール人の化石とみられる骨が見つかっており、このほどその損傷状態を詳しく調べたところ、同じく洞窟に残されていたクマなど、冬眠する動物の状態と類似していたというのです。
一般に冬眠は骨の形成に大きな影響を与えます。
もしも人間がクマのように冬眠すれば、筋力が衰えるのと同時に骨量も減少し、まともに歩けなくなると推測されています(クマは目覚めてさほど経たないうちに、ちゃんと歩行できる)。
この洞窟で発見された人骨は、まさに何度も冬眠を繰り返し、成長が妨げられたような痕があったというのです。
とはいえ専門家の間でも見解は分かれており、冬眠説を支持する声はけっして多くはありません。
ただ、なんらかの条件が揃うことでヒトの冬眠が可能だとするならば、それは人類にとって、新たな可能性が広がるニュースといえるでしょう。