「光触媒技術」が注目を集めるワケとは
- 2023.03.22
新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなか、不特定多数の人が訪れる場所や乗り物では、人が触れるところを小まめにアルコール消毒するのが当たり前の光景になっています。
しかし、路線バスや電車の車内などを小まめにアルコールで拭いて回るのには時間がかかるし、人手を増やすにも限界があります。
そこで注目されているのが、光が当たるだけでウイルスを不活性化する効果がある酸化チタンコーティングです。
この技術は光触媒作用のひとつで、日本人化学者の藤嶋昭氏によって1967年に発見されました。
当時、東大大学院生だった藤嶋氏は、水の電気分解の実験中に水中に置いた酸化チタンの表面に光を当てるだけで水が酸素と水素に分解することに気づきました。
そこで、光を当てるだけで物質を分解するのなら菌も分解するのではないかと、トイレの便器に酸化チタンをコーティングしてみたところ、微生物が不活性化して汚れがつかなくなったのです。
光触媒パワーのすごいところはそれだけではなく、なんとトイレの空気中の菌まで殺菌していました。
そこで光触媒タイルとして商品化され、病院の手術室や壁や床にも使われるようになりました。
また油汚れも分解するということで、トンネルの照明カバーなどにもコーティングされました。
排ガスがこもるトンネル内の照明がいつも明るいのは、酸化チタンの光触媒のおかげだったのです。
水から生成できる水素は、二酸化炭素の出ない次世代の燃料として注目を集めていて、トヨタ自動車では燃料電池車「ミライ」ですでに実用化されています。
じつは光触媒技術は、毎年のようにノーベル賞候補として名前が上がっているといいます。
世界が抱えている大きな問題を解決する可能性があるとして、栄誉を受ける日が近づいているのかもしれません。