意外と知らない悪女イゼベル
- 2023.05.19
イゼベルは旧約聖書に悪人として描かれるフェニキア人で、古代イスラエル王国の王妃です。
その名は「悪女」を意味する言葉として使われるようになりました。
イゼベルは、自らの信じるバアル神を崇拝するよう、イスラエルの人々に繰り返し強要しました。
そして、バアル神の崇拝を拒んだイスラエルの預言者たちを殺害するよう命令したのです。
イゼベルは、旧約聖書の列王記の上下ともに登場しますが、実在した人物なのかどうか、また、その悪評が果たして妥当なのかどうかは、専門家の意見が分かれるところだそうです。
実在したとすれば、紀元前9世紀のことです。
旧約聖書の記述では、イゼベルは王家に生まれ、イスラエル王国(南北分裂後の北王国)のアハブ王に嫁ぎました。
このアハブ王も悪名高く、神の怒りに触れた罪深い王のひとりとして旧約聖書に描かれています。
彼については、「新共同訳聖書」にこのような記述があります。
「アハブは、それまでのイスラエルのどの王にもまして、イスラエルの神、主の怒りを招くことを行った」
アハブ王は、イゼベルにそそのかされてフェニキアの神バアルの崇拝を許可しました。
また、イゼベルはバアル神殿への財政支援をアハブ王に求め、さらに、バアル神の崇拝者を増やすために巧みに男性を誘惑しました。
アハブ王の死後、息子のアハズヤとヨラムは順に王位を継承しますが、イゼベルはなおも、バアル信仰を広めるべく動きました。
バアル神は、東地中海地域を中心に広く崇拝されていた神で、旧約聖書の話は、古代の中東における実際の宗教対立を基に描かれたものと考えられています。
1960年代初頭、一説によるとイゼベルのものとされる印章が出土しましたが、この印章が聖書の登場人物イゼベルにまつわる品であるという見方は多くの学者が否定しています。
旧約聖書によると、ヨラム王の部下イエフが「アハブの家を滅ぼし、イゼベルによる偶像崇拝と魔術をやめさせよ」という神のお告げを受けたことから、イゼベルに終焉が訪れました。
イエフはヨラム王を殺害し、ついに、王宮にいるイゼベルを追い詰めますが、イゼベルは自分が殺されると知るや、化粧を施してイエフに対峙した(このことから、悪女を意味する「厚化粧のイゼベル「paintedJezebel]」という表現が生まれています)。
イエフの命令で窓から突き落とされたイゼベルは、犬に食いちぎられて死を遂げていますが、旧約聖書ではその結末を軽妙にこう表現しています。
「イゼベルの死骸は、畑にまかれた肥やしのようになる」